【WOT架空戦記】Cromwell 対 VK 30.01(P) ― 疾風と鋼鉄、草原で衝突す

大陸中部。晴れ渡った空の下に広がる丘陵地帯「フェルデン渓谷」。
その地形は、ティア6中戦車たちが本領を発揮するには最適の舞台だった。
そしてその中央で、運命のように二つの影が向かい合う。
ひとつは、イギリスの誇る高速中戦車 Cromwell。
もうひとつは、ドイツ試作重戦車 VK 30.01(P)。
まるで“疾風”と“鋼鉄の壁”。
特性も性格も異なる2両が、歴史の狭間で巡り合った。
もくじ(CONTENTS)
■ 第一幕:静寂を切り裂くエンジン音

午前0900。
Cromwell の車長ウィリアムは、丘陵の上に立ち上る熱気を見つめながら、機関士に加速を指示した。
「この戦車は走ってこそ価値がある。止まったら死ぬ。覚悟しろ!」
Cromwell の最大の武器は、その 異常なまでのトップスピードと旋回性。
彼は最初から“速度の戦い”に持ち込むつもりだった。
一方、谷底ルートを進む VK 30.01(P) の指揮官フリードリヒは、焦らず淡々と前進を続けていた。
「敵は速い。だが、こちらには装甲と砲精度がある。迎え撃てばいい。」
VK 30.01(P) は中戦車と重戦車の中間にあるような特異な車体で、
決して俊敏ではないが、正面装甲はCromwellより明らかに分厚い。
とくに遠距離の砲撃では、むしろ有利と言えた。
静かに、だが確実に、二つの影は互いの射程へと踏み込んでいく。
■ 第二幕:疾風、山影を駆ける

丘の側面を滑るように走り抜けるCromwell。
ウィリアムは、敵の重装甲を正面から撃ち抜けないことを理解していた。
「横から刺す。英国戦車の勝ち筋はそれしかない。」
Cromwell が左に右に蛇行しながら、一気に敵の側面へアタック角度を作る。
その走りはまさに戦場のスプリンターだった。
しかし、フリードリヒはそれを見逃さなかった。
VK 30.01(P) の砲塔がぎこちなくも正確に追従する。
「動きは速いが、読みやすい……!」
そして一発。
鋭い金属音が丘陵にこだまする。
被弾!
Cromwell の側面装甲が歪み、ウィリアムの頬に火花が散った。
「くそっ、やっぱりこの距離は向こうの間合いか!」
E8と違い、VK 30.01(P) の砲は単発火力も高く、撃ち勝つには危険すぎるレンジ。
それでもウィリアムはアクセルを抜かない。
むしろ速度をさらに上げ、砲撃ラインから滑り出す。
「当たらなければダメージはゼロだ!」
英国式の強気すぎる戦術が、ここで火を噴いた。
■ 第三幕:鋼鉄、揺るがぬ矜持

Cromwell を追うVKは、起伏の激しい地形に苦しんでいた。
車重とサスペンションが災いし、車体が上下に揺れ、砲の照準が乱れる。
その一瞬の隙。
Cromwell が背後を取った。
(今しかない!)
ウィリアムが叫び、砲手が引き金を引く。
砲弾がVKの後部装甲を捉え、黒煙が爆ぜる。
「見たか!これが機動戦の真髄だ!」
しかし、フリードリヒも冷静だった。
彼は旋回をあえて途中で止め、Cromwell の突進方向を予測して待ち構えた。
次の瞬間、VK の砲撃がCromwell の履帯を吹き飛ばした。
「なにっ——!」
Cromwell が急停止し、草原に履帯が転がる。
高速戦車にとって、履帯喪失は“死刑宣告”に等しい。
■ 第四幕:決着 ― 動かぬ獣と、迫る鉄塊

動けなくなったCromwell。
迫り来るVKの砲口。
ウィリアムは最後の賭けに出る。
「正面を向けろ!こっちの砲を少しでも高くして……!」
砲塔を上げ、傾斜をつけ、貫通を弾かせる“ワンチャン”に縋る。
英国紳士とて、死の間際には祈るしかない。
VK の主砲が火を噴く——
しかし、砲弾はわずかに逸れ、Cromwell の砲塔リングをかすめただけだった。
「まだ……生きてる!」
ウィリアムは反撃の砲撃を放つ。
砲弾はVKの履帯横を捉え、ドイツ戦車の重量級の足が止まった。
今度は両者ともに“動けない鉄の塊”。
戦場の中心に、不毛な沈黙が流れる。
互いに装填中。
互いに致命傷。
そして、先に装填を終えたのは——
VK 30.01(P) だった。
最後の砲撃がCromwell の車体中心を撃ち抜き、
英国の快速戦車は深い煙を上げて沈黙した。
■ 終章:勝者と敗者、その意味

Cromwell は“速さで戦う中戦車”。
VK 30.01(P) は“装甲と安定で戦う重戦車”。
真逆の特性を持つ両者は、
互いの長所を最大限にぶつけ合った末、
戦場の地形が、そして一瞬の判断が勝敗を左右した。
この日、勝者となったのは VK 30.01(P)。
しかし、戦場に刻まれたCromwell の疾走の軌跡は、
敗北を超えた美しさを放ち続けていた。
【資料参考・引用】
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