グループ体験学習の基本「コンテントとプロセス」について

今回は鯖戸善弘先生の著書「コミュニケーションと人間関係づくりのためのグループ体験学習ワーク」よりグループ体験学習の基本を理解する上で欠かすことのできない「コンテントとプロセス」という考えについて紹介しておきましょう。

コンテントとプロセスを知る

グループ体験学習の基本を知る上で、「体験学習の循環過程」の他にもうひとつ大切な核となるのが、「コンテントとプロセス」です。直訳すると「内容と過程」と言えます。

このことをわかりやすく説明するために「氷山モデル」というものが用いられます。大海に浮かぶ氷山は、水面に出ている部分(見える部分)と水面下の部分(見えにくい部分)から成り立っていて、実は見えない部分の方が大きいのです。

体験学習では、人間関係の中で行われていることやそこで交わされている言動の部分を「コンテント」と捉えます。その部分は見たり聞いたりできます。

一方、そうしたかかわりにより、自分の心の中で巡る様々な思いや、メンバー間で生じる協力関係、軋轢など、さまざまな作用の部分を「プロセス」と捉えます。

体験学習では、そうしたプロセスの部分に光を当て、人間関係のありようをどう考えるのか、どう対応していくと望ましいのかなどを学んでいきます。また体験学習の循環過程の「指摘」、「分析」、「仮説化」を通してこのプロセスを深めていきます。

プロセスに着目しコミュニケーションのありようを考える

話をしている時に、言葉の掛け合いや態度で、場の空気が固まったり和らいだりします。その時にどのように声掛けをしていったのか、どのように感じたのかをふりかえったりすることで、コミュニケーションのありようを考えることができます。

また、グループで作業や活動をしているときに、メンバーがどのように参加していたのか、どのように意思決定していたのかなどをふりかえります。

つまり、会話の内容や行っていた作業そのもの(コンテント)を分析してその是非を問うのではなく、その時のこころの中で起こったこと(プロセス)から、人間関係のありようや組織の中のメンバーのかかわりを学ぼうとするものです。

ふりかえり時は、プロセスをふりかえることが大切

コンテントとプロセスを区分することは、「ふりかえり」の時に特に重要になります。

私自身の経験を記しておくと、「ふりかえり」では、私がどう感じたか、どの程度関わることができたとか、グループの変化をどう感じたかなど、プロセスをふりかえることが求められているのですが、ついついコンテントの部分についての感想や評論をしている自分がいました。

ファシリテーターは、そのような状況を察知し、さりげなく助言することが求められています。

ふりかえりシート配布時に再度アナウンス

私は、「ふりかえりシート」を配り、記入する際に、再度「ワークの狙いを確認の上、行った内容の出来具合の感想ではなく、人間関係のなかで感じたこと、つまり人とのかかわりをふりかえって、感じたことを書いて下さい」と言います。またつけ加えて、「ふりかえりで書く文字の多い少ないは問いません、自分の素直な気持ちを想い出しながら書きとめることが大切ですと述べています。

まとめと感想

今回は「コンテントとプロセス」について、簡単に紹介しました。いかがだったでしょうか?

私自身は、ファシリテーターとして具体的な体験学習プログラムを実施する際は、「体験学習の循環過程」と「コンテントとプロセス」については、必ず案内するようにしています。

またプログラム自体の構成も、体験学習の循環過程に沿うように設計しています。ふりかえりの時間には、「プロセスをふりかえる」様に再度、念を押すようにしています。そうしないと著者の言う様に、ついついコンテントの出来具合についての振り返りになってしまいがちだからです。特に、勝敗や完成度を競うゲーム系のプログラムの場合は、その傾向が強くなりがちですので注意が必要です。

【もっと詳しく学びたい方へ】

体験学習の基本、コンテントとプロセスについてもっと詳しく学びたい方は、以下の書籍を手に取ってみることをオススメします。

「コミュニケーションと人間関係作りのための体験学習ワーク」鯖戸善弘(著)金子書房

「プロセスエデュケーション 学びを支援するファシリテーションの理論と実際」津村俊充(著)金子書房

Follow me!