【ボードゲーム】『白鷺城 The White Castle』が描く、濃密な80分の戦略絵巻

世界遺産・姫路城。その優美な姿から「白鷺城」の異名で親しまれる日本屈指の名城を舞台にしたボードゲームが、シーモンジャパンから発売中の『白鷺城 The White Castle』だ。近年、世界のボードゲームファンから高い評価を獲得している本作は、単なる“和風テーマのゲーム”ではない。限られた手番の中で最大の成果を引き出す、極めて洗練された戦略ゲームなのである。
もくじ(CONTENTS)
姫路城を舞台にした異色のユーロゲーム

舞台は1761年の播磨国姫路。プレイヤーは地方の小大名となり、藩主・酒井家の信頼を得るため、一族の者たちを城内のさまざまな役職へ送り込んでいく。廷臣として政治の中心へ食い込み、武人として城を守り、庭師として美しい庭園を整備する――。あらゆる階層で影響力を拡大し、最も栄えた一族になることが目的だ。
海外ゲームでありながら、日本史考証や世界観の監修にも力が入れられており、ボード上に広がる姫路城の風景は実に美しい。アートワークを手掛けたジョアン・ガルディエのイラストは、和風テイストを巧みに取り入れながらも洗練されており、ゲーム開始前からプレイヤーを戦国絵巻の世界へ引き込んでくれる。
「たった9手番」が生み出す極上の緊張感

本作最大の魅力は、その凝縮されたゲームデザインにある。
一般的な重量級戦略ゲームでは、多数の手番を積み重ねながら自分のエンジンを構築していく。しかし『白鷺城』では、ゲーム全体を通して実行できるアクションはわずか9回。3ラウンド制で、各ラウンド3手番しかない。
たった9回。
この数字が信じられないほど重い。
1回の選択が資源管理に影響し、その資源が次の配置を可能にし、その配置が得点や追加アクションにつながる。つまり、すべての行動が連鎖しているのだ。序盤の小さな判断ミスが終盤で大きな失点となり、逆に絶妙なタイミングで打った一手が大量得点へとつながる。
プレイ中は終始、「今この手を打つべきか、それとも未来への投資か」という悩ましい選択に頭を悩ませることになる。
ダイスドラフトの新鮮な駆け引き

もうひとつ特筆すべきなのが、本作のユニークなダイスシステムだ。
ラウンドごとに配置される3色のダイスは、橋の上に並べられる。プレイヤーは橋の両端からしかダイスを取得できず、そのダイスを使ってアクションを実行する。
一見単純なルールだが、ここに驚くほど深いジレンマが潜んでいる。
高い出目のダイスは有利に見えるが、左端のダイスを取れば追加ボーナスが手に入る。また、自分の望むアクションスペースに配置する際には出目との差額がコストや利益として発生するため、「大きい数字ほど強い」とは限らないのだ。
- 欲しいダイスを取るか。
- 将来のボーナスを獲得するか。
- 相手に取られる前に行動するか。
毎ターンが悩ましく、それでいて面白い。戦略ゲーム好きなら、このシステムだけで思わず唸ってしまうだろう。
三つの出世街道をどう極めるか

城内には「廷臣」「武人」「庭師」という三種類の人物が存在する。廷臣は城内を出世し、大名の近くへと近づくことで大きな得点を生む。武人は訓練場や城壁に配置され、軍事的な影響力を拡大する。庭師は池や庭園に配置され、継続的な利益をもたらしてくれる。
どの路線を重点的に伸ばすかはプレイヤー次第だ。
政治重視のエリート一族を目指すもよし。軍事力で存在感を示すもよし。
庭園経営で着実に点数を積み上げるもよし。もちろん理想は全部やりたい。しかし手番は9回しかない。だからこそ選択が重要になる。
この「やりたいことが多すぎるのに時間が足りない」という感覚こそ、『白鷺城』の中毒性の源泉といえる。
小箱に凝縮された傑作

近年、『白鷺城』は世界各国のボードゲーム賞で高い評価を獲得し、多数の受賞・ノミネート歴を持つ。BoardGameGeekでも高評価を維持しており、戦略ゲームファンからの支持は非常に厚い。
特筆すべきは、その内容に対するコンパクトさだ。中~重量級ユーロゲームとしては比較的小さな箱ながら、プレイ後の満足感は驚くほど大きい。80分前後という遊びやすいプレイ時間の中に、濃厚な戦略性と達成感が凝縮されている。
【総評・まとめ】

『白鷺城 The White Castle』は、和風テーマと本格戦略ゲームが見事に融合した傑作である。
美しい姫路城の世界観、独創的なダイスドラフト、わずか9手番が生み出す濃密な意思決定。そして何度でも試したくなる戦略の広がり。遊び終えた瞬間、「あと一手あれば……」と思わず唸り、すぐに再戦したくなる。そんな中毒性を秘めた作品だ。
もしあなたが、限られた手番の中で知恵を絞り、最高効率を追求する戦略ゲームを求めているなら――この白き名城の門を、ぜひくぐってみてほしい。姫路城の天守で待つ大名の寵愛は、決して簡単には手に入らない。しかし、その困難さこそが『白鷺城』最大の魅力なのである。
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