【創造的思考】親和図法/KJ法「川喜田二郎が生んだ世界に誇る発想法」

今回は、文化人類学者「川喜田二郎博士」が生み出した発想法「KJ法」を紹介します。
KJ法は、別名「親和図法」(Affinity Diagram)とも呼ばれています。「新QC7つ道具」にも採用され、多くのシーンで活用されています。
もくじ(CONTENTS)
KJ法の生みの親「川喜田二郎」博士

親和図法/KJ法の内容を紹介する前に、その生みの親である川喜多二郎博士について紹介しておきましょう。
川喜田二郎博士の経歴
文化人類学者,地理学者。
京都帝国大学文学部地理学科卒業。大阪市立大学助教授を経て,東京工業大学教授,筑波大学教授,中部大学教授を歴任。東京工業大学名誉教授。
京都帝国大学時代に山岳部に入り,今西錦司,梅棹忠夫らと探検隊を組織し,大興安嶺山脈などを調査する。
大阪市立大学助教授時代の1953年に京都大学マナスル山登山隊に参加。ネパール,チベットの山村のフィールド調査を研究課題とした。
その経験をもとにKJ法と呼ばれる独自の情報整理法を編みだした。KJ法は科学研究のみならず企業の情報整理にも応用された。
ヒマラヤ山村の環境保全と活性化のために設立したNGO〈ヒマラヤ保全協会〉の活動も知られている。
マグサイサイ賞(1984年),福岡アジア文化賞(1993年)を受賞。著書に《発想法 創造性開発のために》(1966年,中公新書)などがある。
出典・引用:株式会社平凡社 百科事典マイペディアより
KJ法が生まれた経緯
KJ法が生まれた経緯について、川喜田博士は、著書「発想法」の中で、次ように述べています。
その発想法は、野外科学の必要性からはじまった。野外で観察した複雑多様なデータを「データそれ自体に語らしめつつ、いかにして啓発的にまとめるたらよいか」という課題から始まっている。
データは単に足し算、割り算するだけではいけない。それらが組み合わされて、いままで気がつかなかった新しい意味を発想させなければならない。これが発想法問題のきっかけになったのである。
出典・引用:「発想法 創造性開発のために」(川喜田二郎:中公新書)より
フィールドワークによって得た膨大なデータを、分類・要約・分析する。
そしてこれらを統合し、新しいアイデアを生み出すための手法として、博士はKJ法を考案したのです。
KJ法の名前の由来
KJ法のKJとは、Kawakita Jiroという博士の名前の頭文字です。
この事実は、様々な書籍にも書かれており、良く知られています。
ただし、「どうしてこの名前になったのか?」詳しい由来については、知らない人も多いでしょう。
この名前の由来についても、エピソードがあるのですが、今回は割愛します。
興味のある方は、博士の著書「発想法~創造性開発のために」(中公新書)を読んでみて下さい。
親和図法/KJ法の概要

それではいよいよ今回の本題「親和図法/KJ法」について紹介しましょう。
親和図法/KJ法とは…
観察やインタビュー、ブレーンストーミング等によって得られた、様々な言語データを、データの親和性によって整理し、各言語データの語りかける内容から、問題の本質を探究する手法です。
【親和性とは】
- ある物質が他の物質と容易に結合する性質や傾向。染色色素が特定の生体組織に結合しやすい傾向や、細菌・ウイルスが特定の細胞や臓器で増殖しやすい傾向など。
- 物事を組み合わせたときの、相性のよさ。結びつきやすい性質。「オリンピック中継とSNSは親和性が高い」
(小学館:デジタル大辞林より引用)
親和図法/KJ法の手順

親和図法/KJ法を行う手順は、以下の順番で行うのが基本です。
手順1:問題を提起し「言語データ」を集める
親和図作りにあたり、まず必要なのは「目的」を決めるということです。
すなわち、「何のために親和図を作るのか?」を押さえ、しっかり問題を提起してから始める必要があります。
「言語データ」を集める方法
言語データを集めるには、様々な方法があります。具体的には…
- ヒアリング:会議やインタビューの発言から、言語データを収集します。データを集めの際、多くの人から意見が出るように工夫する。
- アンケート:アンケートに自由記載された内容等から言語データを収集します。できる限り具体的な内容を「主語+述語」の短文で表現する。
- ブレーンストーミング:ブレーンストーミング行う際は、常識にとらわれず、なるべく沢山のアイデアを集めるのがポイント。
- ネットコメント・レビュ:ネット上のコメントや製品レビュー等から言語データを収集。ただし、ステマや悪意あるコメント等もあり注意が必要。
ブレーンストーミングのやり方について興味のある方は、以下の記事も御覧ください。
手順2:言語データをカード化する

手順1で描き出した意見やアイデアを、ひとつひとつカードに書き出していきます。
この時のポイントは、ふたつ
- ポイント1:「主語+述語」の短文で表現
- ポイント2:一枚のカードにはひとつの内容
カード化する際の「道具」については、「情報カード」や大き目の「ポストイット」等が一般的です。
しかし最近は、デジタルデバイスを使って行うのがトレンドです。オンラインホワイトボードの付箋機能等を使うと便利です。
オンラインホワイトボードとして有名なアプリとして、マイクロソフトホワイトボードやグーグルジャムボード等があります。
これらアプリの使い方・活用方法について興味のある方は、以下の記事を御覧ください。
【簡単図解】マイクロソフト・ホワイトボードの使い方【徹底解説】
【簡単図解】Google Jamboardの使い方【G-Suite】
手順3:言語データをグループ化する

作成した言語カードは、全体を俯瞰できるよう、机の上やホワイトボードに広げます。
広げたデータを読みながら、「似ている」と思うカードを寄せてグループ化していきます。
この時に注意すべきポイントは、「小グループから大グループへ」と寄せていくことです。
ところが、実際には大分けから小分けにもっていこうとする人もいる。
これは、「内容的に市場調査・品質管理・労務管理と大きく三つに仕切るのが正しい」等という、グループ分けについて独断的な原理を頭に持っているからである。
これではKJ法の発想的意義は全く死んでしまう。
これに反して、小分けから大分けへ進む場合はぜんぜん違う。
吐き出された意見、情報それ自身が語りかける示唆に素直に耳を傾けていたらば、自然にこういうふうに編成されてきたということである。
出典・引用:「発想法 創造性開発のために」(川喜田二郎:中公新書)より
手順4:親和カードをつくる
グループ化したカードの言語データを、一枚のカードにまとめて書きます。このカードのことを「親和カード」と呼びます。
親和カードを作成する時のポイントは、「集めた言語データの意味をよく表す短文で作成する」ことです。
手順5:グループ化と親和カード作りを繰り返す
グループ化した「言語カード」を重ね「親和カード」を置きます。
そして、1枚のカードとして、元の場所に配置しなおします。
これらの作業を繰り返しながら、全体のカードの束が3~5(グループ)になるようにします。
この「繰返し作業時」には、注意すべき点があります。
- 注意点1:無理にまとめない
- 注意点2:じっくりと焦らず
親和図法/KJ法の研修・トレーニングの場では、全体の流れを体験するために、時間内に「親和図」を完成させるのが基本です。
しかし、実務で親和図をつくる時は、あせらずじっくり時間をかけましょう。
うまくグループ化できない時は、一旦保留し、熟成させてから改めて作業しましょう。
手順6:親和図を作成する

3~5つ程度の大きなグループにまとまったら、いよいよ親和図の作成に取り掛かりましょう。
まずは「言語カード」と「親和カード」を広げて見やすいように配置します。
そして「時間軸」や「工程順」等の切り口で、カードを再配置しましょう。
最後に「枠取り」や「矢印」等の図形等を書き加えて、親和図を完成させます。
手順7:情報をまとめる
親和図ができ上ったら、これらの情報をまとめます。
まとめる方法として一般的な方法は、「文章」にすることです。
川喜田博士は、この「図解→文章化」の手順をKJ法AB型と命名しました。
ちなみに、文章化する際には、
- 箇条書きでまとめる
- レポート形式でまとめる
等の方法があります。TPOに合わせて使い分けるとよいでしょう。
親和図法/KJ法に費やすべき時間
親和図法/KJ法の手順について、簡単に紹介しました。
次に「費やすべき時間」について川喜田博士の考えを簡単に紹介しておきます。
KJ法を行使するときの、費やす時間について一言しよう。
例えば会議に使った例では、二時間の討論の後始末にどれだけの時間がかかるだろうか。討論が終わったときには、記録係によってすでに紙きれができている。その枚数は、すでにのべたように数十枚から百数十枚ぐらいであろう。
その紙きれ群のグループ編成には、はじめての人ならときとして十二時間もかかることがあるだろう。
(中略)
グループ編成が終わり、さらにそれを図解するには、グループ編成にかけた時間の三、四倍を要するであろう。
紙片を並べるだけでなく、描いて清書する手間が入るからである。
ついで文章化するときには、さらに図解に使った時間の一~十数倍の時間がかかる。時間は、原資料をどこまで克明に使うかによって大きく違ってくる。
引用:川喜田二郎「発想法」第四章「創造体験と自己革新」より
要するに「KJ法を実践するには、多くの時間が必要」と博士は主張しています。
じっくり焦らず時間をかけて完成させましょう。
また親和図の作成そのものは、目的ではなく手段です。
例えば、ビジネス上の課題を解決する手段として親和図を作成しているにすぎません。
実行計画を作成する

ブレストを行い、親和図を作成したら、最後にそれを具体的な実行手順を示した計画に展開しましょう。
川喜田博士は、この実行手順計画を作成するのに、有効な方法として「PERT法」(アローダイアグラム)を推奨しています。
また実際のビジネスの現場等で「成果」を上げるには、「ブレスト」「親和図作成」だけでは不十分です。
実行計画に落とし込んだ後、実際にPDCAを繰り返す必要があるでしょう。
まとめと感想

今回は、親和図法/KJ法について簡単に紹介しました。
この手法を学べば、「言語データ」を整理する方法が身につきます。
「グルーピング」のコツがつかめるようになります。
そしてなにより、「アイデア発想後の整理」「課題解決のための計画づくり」等、様々なシーンで活用できます。
是非、皆さんも「親和図づくり」はじめてみませんか?
<参考文献>
「新QC七つ道具の使い方がよーくわかる本」(今里健一郎:秀和システム)