グループ体験学習の進め方「ファシリテーターの役割」
今回は鯖戸善弘先生の著書「コミュニケーションと人間関係づくりのためのグループ体験学習ワーク」よりグループ体験学習を進めていく上で欠かすことのできない「ファシリテーターの役割」について紹介しておきましょう。
もくじ(CONTENTS)
ファシリテーターの役割
ワークを進めながら学びを援助促進していく人を「ファシリテーター」と呼びます。教師や講師でも無ければ司会者でもありません。その語源はfacilis(たやすい・容易)です。それが動詞になるとfacilitate(容易にする・なしやすくする)となり、それを担う人でfacilitator(容易にする人・なしやすくする人)となります。
学びの場において、受講者は普通なら、ありのままの自分をだそうとはしません。そこで、体験学習を進めるにあたりファシリテーターは、参加者に対し、リラックスして安心してかかわれる場であることを示し、学ぶものがワークを通してありのままの自分を見つめることができるようにします。そして他のメンバーから気づいたことを批判的ではなく事実のデータとして返してもらうことで、参加者は学びが深まります。
そのためには、ファシリテーターは受講者から信頼される存在でなければなりません。
体験学習の学びがプロセスから学ぶものであれば、ファシリテーターが主に関与したり観察したりするのは学んでいるメンバーのグループプロセスです。学びのプロセスが効果的に進んでいるかどうかに集中します。
ファシリテーターの行動基準
ファシリテーターの行動基準について5つ紹介します。
① 相手中心であること
主体は、ワークを行っている人たちです。よってその人に光を当てます。そうすることで、対象者は、あるがままの自分や自分と他者との関係に向き合います。フアシリテーターはあるがままの相手を受け取ること、無条件に相手に関心を示し、共感的に理解することが求められます。
② 個の尊重
私たちは、同じ状況に遭遇していても、「十人十色」で人それぞれの特色ある考え方や行いがあります。それに対して価値判断を加えることなく、個人の独自性を尊重します。「私は尊重されている」と各人が感じることで、自分のありのままをだし、学びが促進されます。
③ 非評価の姿勢
あるがままの個を受け入れるのがファシリテーターの立ち位置であるなら、個人の考えや行いに対して評価することはファシリテーターとして望ましいことではありません。例えば「積極的な人は優れている」など、ひとつの価値観でメンバーを観てはいけません。それぞれの個を尊い存在として接していくことが大切です。
ファシリテーターは、プロセスを冷静に観なければなりません。対象者は、評価の目を感じるとありのままの自分を出さなくなります。それは相互理解の妨げになります。
④ 非操作ということ
ファシリテーター自身の価値判断で、こうあるべきだと思いこみ、その方向に操作するような関わり方をしてはいけません。対象者のありたい方向を自身で見つけ出すのを促すのがファシリテーターです。
⑤ ともにあること
ファシリテーターは、対象者に対して共感的にかかわることが求められます。私を受け入れてくれているという信頼関係を対象者がもつことにより、対象者はあるがままの自分を出し、その自分に向き合い、グループメンバーに対しても親和的なまなざしを向けます。
まとめと感想
今回は「ファシリテーターの役割」について、簡単に紹介しました。いかがだったでしょうか?
私が講師・ファシリテーターとしてプログラムを運営する際には、このファシリテーターの役割を意識するようにしています。
ただ非評価の姿勢については、表面上は貫くようにしていますが、内心では、この参加者は上手く役割をこなすことができているな等と評価してしまいます。
【もっと詳しく学びたい方へ】
体験学習についてもっと詳しく学びたい方は、以下の書籍を手に取ってみることをオススメします。
・「コミュニケーションと人間関係作りのための体験学習ワーク」鯖戸善弘(著)金子書房
・「プロセスエデュケーション 学びを支援するファシリテーションの理論と実際」津村俊充(著)金子書房