思考実験コンセンサスゲーム「暴走トロッコと作業員」(導入編)

今回紹介するのは、イギリスの倫理学者フィリッパ・フットが1967年に提示し、今日まで議論が繰り返されてきている有名な思考実験をテーマにしたコンセンサスゲームです。

思考実験とは…

思考実験(thought experiment)とは、「頭の中で想像するのみの実験」のことです。そのため、道具や場所を必要としません。ある特定の条件の下で考えを深め、頭の中で推論を重ねながら自分なりの結論を導き出していく、「思考による実験」です。実際に物理学や哲学など、様々な分野で思考実験は行われています。

コンセンサスゲーム「暴走トロッコと作業員」

路線の切替えスイッチのそばにいるあなたは、とんでもない光景を目の当たりにしてしまいました。

あなたの右方向から石を沢山積んだトロッコが、猛スピードで暴走しています。ブレーキが故障しているのか明らかに異常なスピードです。

とうてい今から止めることはできません。ただ、線路の切替えを行えば進行方向を変えることはできます。

線路の先には、5人の作業員がいます。5人ともトロッコには全く気が付いておらず、おそらく避けることはできないでしょう。このままではトロッコが突っ込み、5人は死んでしまいます。

あなたは、切替えスイッチの存在に気づき、これを切り替えて5人を助けようと思いたちます。あなたは切替えスイッチに近づき、勢いよくスイッチに手を伸ばします。

しかし、何ということでしょう。あなたは一瞬、切り替える先の線路の方に目をやり、様子を確認しました。

すると視線の先には一人の作業員がいるではありませんか。スイッチを切り替えれば、この一人の作業員が死んでしまいます。

あなたはこの6人とは面識はなく、6人とも何の罪もない人です。ただ、悲惨な現場に居合わせてしまっただけです。あなたもたまたまこの現場に居合わせてしまっただけで、そこにスイッチが無ければただの傍観者のひとりです。

実際には「5人もいれば誰かが気付くだろう」とか、「大声を出して危険を知らせる」とかいろいろな方法を考えてしまうところですが、ここではスイッチを切り替えること以外、あなたに出来ることはなく、作業員は皆トロッコの暴走に気づいていない状態とします。

【設問1】(個人ワーク:制限時間3分)

あなたはどちらの行動をとりますか

A:スイッチを切り替える

B:スイッチをそのままにしておく

【設問2】(グループワーク:制限時間10分)

設問1の内容について、グループで話合い、グループとしての回答(選択肢A又はB)を決定して下さい。

またなぜその選択肢に決定したのか、その理由についてもグループとしての意見をまとめて下さい

【グループワーク時の留意点】

①:充分、納得できるまで話し合ってください。自分の意見を変える場合は、自分にも他のメンバーにも、その理由を明らかにして下さい。

②:自分の意見に固執し、他に勝つための論争(あげつらい)は避けて下さい。

③:決定するのに、多数決とか、取引をする等の「葛藤をなくす方法」はなるべく避けて下さい。

④:少数意見は、集団決定の妨げではなく、考え方の幅を広げてくれるものと考えましょう。

⑤:論理的に考えることは大切ですが、それぞれのメンバーの感情やグループの動きにも充分に配慮しましょう

ゲーム後の流れ

複数のグループに分かれてゲームを実施した場合は、ゲーム後に全体発表会を行います。

発表会は、各グループの代表者1名が前に出て、グループとしての回答、その回答に至った理由などを発表します。

発表会が終わった後は、講師・ファシリテーターより、講評&解説を行います。

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