【楽しく学ぶ心理学】認知バイアス「熟慮の悪魔」

人は誰でも、ココロにクセを持っています。

自分の心をあなたは知りたくないですか?

今回は、池谷裕二先生の「自分では気づかないココロの盲点」(講談社)より、心理クイズを一問紹介します。

さあ、あなたも問題に挑戦してみて下さい。奇妙なココロの癖が明らかになるでしょう…

問題:思慮深い行動

4人でちょっとしたゲームをしましょう。

まず全員にそれぞれ40円を配ります。そして各々に、40円のうち好きな金額を「共同募金」に寄付してもらいます。

寄付した金額は2倍になって共同募金に入り、その後に4等分されて自分に返ってくるルールになっています。

例えば、20円を寄付すれば、2倍の40円が預金プールに入り、これが4等分された10円が自分にもどってきます。まったく寄付しなければ40円はまるごと自分の所持金になります。

この寄付ゲームを4人一斉にやってもらいます、すると寄付金額を決めるまでの時間が短い人と、なかなか決められないで考え込む人がいることがわかります。

さて、寄付された金額は、どちらの傾向があったでしょうか?

  • 決断の速い人のほうが多額の寄付をする
  • 決断の遅い人のほうが多額の寄付をする

解答解説:思慮深い行動

答え:1.決断の速い人のほうが多額の寄付をする

10秒以内に即断した人は寄付金が平均27円だったのに対し、10秒以上考え込んだ人は平均21円でした。つまり熟慮するタイプは自分の利益を優先する傾向があったのです。

判断の遅い人でも、「迅速に判断してください」と促すと寄付率が高まり、逆に判断の速い人に「じっくり考えるように」と促すと寄付率は下がりました。

善は急げ。脳は、直観的に即断すればするほど、全体に利する行動を取ります。

逆に、一歩踏みとどまって考えるほど、「内なる声」に正直でなくなり、利己的になります。

ショッピングでは、熟慮すると好みが一定せず、嗜好がブレることが知られています。

考えれば考えるほど自分の直観に素直でなくなるのです。

迷わず即決が吉。

試験の最中に考えすぎるとかえって悪い解答をしてしまいます。

スポーツで自分のフォームを意識しすぎるとかえって失敗します。

「あの人はどんな感じ?」と訊かれたときも、間髪入れずに「いい人だよ」と答えましょう。

5秒おいて答えた「いい人だよ」は意味が反転します。

「熟慮の悪魔」(The Devil in the Deliberation)

自分では気づかないココロの盲点(講談社・池谷裕二)より

熟慮の悪魔とは?

「熟慮の悪魔」(The Devil in the Deliberation)とは、じっくり考えた決断ほど一貫性がなくなり、利己的な判断をしてしまう傾向のこと。

感想雑記:熟慮とは忖度すること

対人コミュニケーションにおいて、「熟慮する」とは「忖度する」とほぼ同義と私は考えています。

「忖度」の意味を調べてみると…

忖度とは

①.他人の心情を推し量ること。また、推し量って相手に配慮すること。
②.出世や自己保身の心理から、上司等の心情を汲み取り、公正さを欠くことを自覚して行動すること。

と書かれています。①と②どちらも共通しているのは「熟慮」していると言うコト。

しかし、①と②では、全く意味合いが違います。

①は「思いやり」の気持ちを背景にしているのに対し、②は「利己的」な気持ちを背景にしています。

すなわち、忖度と言う言葉は、良い意味でも悪い意味でも使われる言葉なのです。

ただし、2017年に流行語大賞となった「忖度」は、政治的な問題を背景に流行したため、②の悪い意味で使う言葉という印象が強くなってしまいました。

しかし良い意味の「熟慮・忖度」も当然あります。

「嘘も方便」

もし、母親が、重い病気にかかり、医者からあなたに対し「お母さんの命は、残り半年程度でしょう」と聞かされているとします。

その上で、お母さんから

「私は元気になれるかな?」

と尋ねられたら、どう答えますか…多くのの熟慮・忖度した上で、

「お母さんは、きっと元気になれるよ」

そう答えることでしょう。

もっと軽い例を挙げると…

恋人があなたに手料理を作ってくれました。その時…

「私の作った肉じゃが、美味しい?」

そう尋ねられたら、どう答えますか?

私なら、心の底では、それほど美味しいと思わなくても…

「めっちゃ美味しいよ…」

と答えてしまいます。「思いやり」の気持ちを背景とした熟慮・忖度ですね

熟慮し忖度するのが大人の社会

私は良い意味でも悪い意味でも、熟慮し忖度しながら、毎日の生活を送っています。

  • 人を思いやる気持ちから、熟慮・忖度する時もあります。
  • 一方、利己的な計算から、熟慮・忖度する時もあります。

上司から、「帰りに一杯飲みに行こう」と誘われれば、本心では、めんどくさいなあと思いつつ、自己保身のためから、笑顔で「いいですよ!」と答えてしまいます。

私は、人間社会の中では、ある程度、熟慮・忖度して生きるのは、当然で仕方がないことだと感じています。

直感的に感じたコトを素直に言葉にするだけでは、上手くいかないことも多いですから…

そういう訳で今回紹介した「熟慮の悪魔」というネーミングは、私はあまり好きではありません。

人は、熟慮した結果、悪魔にも天使にもなれるのですから…

まとめ(私の結論)

今回は認知バイアス「熟慮の悪魔」について紹介しました。

内容をもう一度、おさらいすると…

  • 「熟慮の悪魔」とは、じっくり考えた決断ほど一貫性がなくなり、利己的な判断をしてしまう傾向を示す心理学用語。
  • しかし、熟慮した結果、いつも利己的な判断をするとは限らない。相手を想いやる熟慮もある

今回も最後まで御覧頂きありがとうございました💖

<参考&引用文献>

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